OSMOS(オスモス)光学ストランドセンサによる構造ヘルスモニタリング

国土交通省新技術NETIS 登録番号:KT-200126-A
点検支援技術性能カタログ 技術番号:BR030056

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SHMよもやま話 第2回:すべての橋にSHMは必要か?

第1回では、構造ヘルスモニタリング(SHM)は「老朽化インフラの余寿命を言い当てる装置」ではなく、
・劣化や損傷がどこまで進んでいるか
・想定と異なる挙動や外力が現れていないか
といった変化を早めに捉え、
・補修・更新工事のタイミングや優先順位づけ
・通行制限や供用停止の判断
などを合理的に根拠づけるための、意思決定支援の道具である、という整理を行った。
 
インフラ構造物には、橋梁のほかにもトンネル、ダム、護岸、斜面対策施設など様々な種類があるが、
SHMの適用実績や利用率が特に高いのはやはり橋梁である。
以降は、話を橋梁に絞って進めることにする。
 
そこで次に出てくる素朴な疑問がこれである。
「それなら、すべての橋にSHMを付ければよいのではないか」
「そもそも、現行の5年に一回の近接目視点検だけで十分ではないのか」
日本では、道路橋定期点検要領などに基づいて、
・おおむね5年に一度
・近接目視を基本とした全数点検
が行われている。
この仕組みだけで長年、安全性を保ってきた橋梁が大多数であることを考えれば、
・「点検で異常なしと言われている橋に、さらにセンサを付ける必要があるのか」
という感覚は自然である。
 
一方で、目視点検にはどうしても限界がある。
・点検はあくまで「その時点」のスナップショットに過ぎない
・箱桁内部、ケーブル内部、海上高所など、近づきにくい部位が存在する
・交通荷重、温度変化、地震、風、塩害など、時間とともに変動する外力そのものは見えない
これらは、5年ごとの点検だけでは把握しきれない領域である。
 
とはいえ、全国の橋に片っ端からSHMを導入するのは現実的ではない。
・センサ、データロガー、通信、電源、設置工事などの初期コスト
・データの保存・解析・機器更新といった運用コスト
・データを読み解く技術者・担当者の労務コスト
といった要素を考えると、「全部に付ける」は費用面でも体制面でも成り立たない。
 
そこで重要になるのが、
・「どの橋にだけSHMを入れるのか」
という考え方である。
 
例えば、次のような橋は、ほかと比べてモニタリングの優先度が高いと考えられる。
・壊れたときの影響が極めて大きい橋
(高速道路、空港・港湾アクセス、重要物流ルートなど、通行止めになると地域や経済への影響が非常に大きい橋梁)
・構造や劣化状態に不確実性が大きい橋
(長大橋やケーブル系橋梁、既往のコンクリートの材料劣化(塩害・中性化・ASRなど)がある橋梁で、その劣化進展状況を把握したい場合、
あるいは損傷等が発生した橋梁の供用性を判断したい場合や、応急処置後の安全性を確認したい場合)
・外力・荷重環境が厳しい橋
(地震多発地域や津波・洪水リスクの高い河川・海岸部、重交通・過積載路線に位置する橋梁など、設計時の想定と現実の使用条件とのギャップが懸念される場合)
・近接目視が難しく、内部挙動の把握が求められる橋
(海上高所、箱桁内部、ケーブル内部など、人が近づきにくい部位が重要な耐力要素になっている橋梁で、目視だけでは状態を評価しきれない場合)
 
このような橋では、「5年に一度のスナップショット」だけでは不安が残るため、
SHMによって「時間方向の情報」や「内部挙動の情報」を追加で取りにいく意義が生まれる。
 
つまりSHMは、
・「すべての橋にとりあえず付けておく安心装置」
ではなく、
・「モニタリングの目的が明確な一部の橋にだけ、状態を継続的に把握するための装置」
として位置づけることがSHM実装への第一歩と言える。

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